疲れた、痛い、こいしい、おなかがすいた、と言った原始的な感情ならいくらでも涙が出るのに、ただ多くのひとが普通泣くとき、卒業式、お葬式、泣けるとされる本の類いを読んだとき、に涙が溜まって目が翳むことはあってもどうしても頬にこぼれない。

友人の肩が震えるのをみる。そういうとき、一人でさざめいている気がする。

そしてなぜだかあとあとになって思い出すとき、いとも簡単に涙はでるのだ。それは帰り道であったり、ビル風に吹かれたときであったり、2年後であったり。

なにかがズレていると思いながら、人前で泣きたくないのなどとさも知りなんな顔をして語ったこともあった。

でも意志の問題ではないのだ。きっと。ものごとが言葉に表すことができるうちは溢れられないのだ。欲求。後悔。行き場のない感情が目のすぐうしろがわにある涙袋にぽた、ぽたと溜まり濃くなり、袋は水を吸って重たくなって、それでも構わずに溜め続ける。臨界点に達するから溢れてしまうのだ。

流れてしまう涙は、目を凝らしたら、濁っているのかもしれない。